ドリフトの発祥とは?走り屋文化から世界的モータースポーツへ広がった日本発のスタイル
2025.07.22タイヤを横滑りさせながらコーナーを駆け抜ける「ドリフト走行」は、迫力と華やかさに満ちた独自のドライビングスタイルです。もはやモータースポーツの一つとして世界中で人気を集めるこのドリフトですが、その発祥は実は日本。しかも、サーキットではなく峠道がルーツにあることをご存じでしょうか。
この記事では、ドリフトの起源から現在に至るまでの歴史、そして現代のドリフトシーンがどのように広がっていったのかを、モーターランドSPの視点からわかりやすくご紹介します。
ドリフトの起源は「峠の走り屋」文化にあった
1970年代から1980年代の日本では、自動車の性能が急速に向上し、スポーツカーも一般ユーザーに身近な存在になりつつありました。そんな時代背景の中で、峠道を舞台に非公式な走行を楽しむ「走り屋」たちが登場します。
彼らが好んだのは、タイヤを滑らせながらコーナーを駆け抜けるテクニック。これこそが後に「ドリフト」と呼ばれる技術の原型です。当時はまだ“ドリフト”という明確な言葉が浸透しておらず、「滑り走行」や「横向きコーナリング」といった感覚で広まっていきました。
この走りを支えた車両が、FR(後輪駆動)の軽量スポーツカーです。中でもトヨタ・AE86(ハチロク)は、安価で扱いやすく、まさに走り屋たちのアイコン的存在となりました。
ドリフト文化の確立と土屋圭市の存在
ドリフトが全国に広まり、ひとつの「文化」として認知されるようになった背景には、ある人物の存在が大きく関係しています。その人物とは「ドリキン(土屋圭市)」です。
土屋圭市さんは、もともとアマチュア走り屋出身のプロレーサーで、全日本ツーリングカー選手権やル・マン24時間レースにも出場した実績を持つ名ドライバーです。彼がレース中に見せた“わざと滑らせる走行技術”は、従来の常識を覆すものであり、これが「ドリフト走行を競技として魅せる技術」として注目されました。
土屋圭市さんはビデオや雑誌などのメディアを通じてドリフトの魅力を発信し、1990年代以降には「ドリフト=日本発の新しいスタイル」という認識が広がっていきます。
サーキットへの移行とD1グランプリの誕生
ドリフトが発祥した当初は、公道での走行が中心でしたが、安全性や違法性の問題が指摘されるようになり、次第にサーキットで合法的に楽しむスタイルへとシフトしていきました。
その象徴ともいえるのが、2000年にスタートした「D1グランプリ」です。これはドリフトを競技として確立した世界初のプロドリフトシリーズで、角度・スピード・ライン・見せ方などを採点基準とし、審査員の評価によって勝敗が決まるという独特のルールが特徴です。
D1グランプリは国内外の注目を集め、やがてアメリカやヨーロッパでも同様のシリーズが立ち上がるきっかけとなりました。まさに、ドリフトが**“ストリート発祥のカルチャー”から“世界的な競技”へと進化した瞬間**といえるでしょう。
海外への広がりと「JDM」ブーム
ドリフトはやがて海外のクルマ文化にも影響を与えていきます。とくに2000年代以降、「JDM(Japanese Domestic Market)」という日本製カスタムカーやパーツへの関心が高まり、それとともに日本発のドリフトスタイルが世界中の若者に支持されるようになりました。
アメリカでは「フォーミュラ・ドリフト(Formula Drift)」というプロリーグが誕生し、世界各地でドリフトイベントが開催されるようになります。こうした流れの中でも、日本はドリフトの聖地として今なお強い存在感を保っています。
また、映画「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」や人気マンガ「頭文字D」の影響もあり、ドリフトは“日本らしいクールな走り”として世界的に認知されることになりました。
現代のドリフト文化とサーキットの役割
現代では、ドリフトはモータースポーツの一ジャンルとして確立された存在です。全国のサーキットでは、ドリフトイベントや練習会が定期的に開催され、初心者からプロ志向のドライバーまで幅広く参加できる環境が整っています。
モーターランドSPでも、安全な環境でのドリフト走行が可能な走行枠を提供しており、多くの地元ドライバーが日々テクニックを磨いています。初めて挑戦する方でも、ドリフトの“楽しさ”と“奥深さ”を体感できるはずです。
ドリフトは日本が世界に誇るクルマ文化
ドリフトの発祥は、1970〜80年代の日本に根付いたストリートカルチャーにあります。それがサーキットへと舞台を移し、D1グランプリの登場とともに競技化し、いまや世界中で愛されるモータースポーツへと成長しました。
モーターランドSPでは、そんな日本発のドリフト文化を大切にしながら、これからも多くのドライバーに向けて、安全で楽しいドリフト体験の場を提供していきたいと考えています。
ドリフトに興味がある方、そしてそのルーツに触れてみたい方は、ぜひ一度モーターランドSPに足を運んでみてください。走ることの楽しさと文化の重みを、きっと肌で感じていただけるはずです。